ソポクレス『オイディプス王』 あらすじ

『オイディプス王』は、ソポクレス(前496頃‐前406)による作品で、ギリシャ悲劇の最高傑作の一つとされています。

あらすじ

<オイディプス王が治めるテーバイでは、飢餓や疫病などの災厄が続いていました。

オイディプスは、災厄をもたらしている原因が、テーバイの先王ライオスを殺害した犯人の穢れによるものであることを神託で知ります。

そこでオイディプスは、災厄を抑えるために、必死にライオス殺しの犯人を探します。

しかし、オイディプスは、

  • ライオス殺しの犯人はオイディプス自身であった
  • ライオスはオイディプスの実の父親であった
  • オイディプスは未亡人となった実の母親と結婚して子をもうけていた

という衝撃の事実を知るに至ります。>

物語の前段

舞台は古代ギリシアの都市国家テーバイです。

旅をしていたコリントスの王子オイディプスは、テーバイに立ち寄りました。

このころのテーバイは、王のライオスが何者かに殺された上に、スフィンクスが現れ、人々を怯えさせていました。

スフィンクスは、乙女の顔とライオンの体と大きな翼をもつ怪物で、通りかった人々に、

「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足になるものは何か」

という謎々を問いかけて、解けなかった者を食い殺していました。

ライオス王の死後、王妃イオカステの弟で、王の代理としてテーバイを治めていたクレオンは、

「スフィンクスの謎を解いた者に、王位と王妃イオカステを与える」

と宣言しました。

これを聞いたオイディプスは、スフィンクスの問いかけに挑戦し、

「それは人間だ。なぜなら、生まれたときにはハイハイするので4本足、成人の時は2本足、老年になってからは杖を使うから3本足になるからだ。」

とあっさり回答しました。

ギュスターヴ・モロー『オイディプスとスフィンクス』1864

はじめて謎を解かれたスフィンクスは、ショックで谷に身を投げて死んでしまったので、テーバイには平和が戻りました。

オイディプスは救世主とたたえられ、前王の妃イオカステと結婚し、4人の子どもをもうけて、国を統治しました。

ライオスを殺した犯人を探せ

やがて、オイディプスの治めるテーバイにおいて、飢饉が発生し、疫病がはやりだしました。

オイディプスは、解決策を探すべく、デルポイ神殿でお伺いを立てると、

「災厄は、先王ライオスを殺した者の穢れのためであるから、その犯人を見つけ出して国外に追放せよ」

という神託を得ることができました。そこでオイディプスは、

「ライオス王を殺した犯人について知っていることがある者は申し出よ。何人も彼をかくまったり、水を与えたりしてはならぬ」

と宣言しました。

予言者テイレシアス

オイディプスは、クレオンの推薦で、予言者テイレシアスを王宮に呼び寄せ、ライオス王を殺した犯人を見つけ出すための協力をお願いしました。

ところが、すべての真実を見抜いていたテイレシアスは、王の立場をはばかり、協力をかたくなに拒みました。

テイレシアスの非協力的な態度に激怒したオイディプスは、

「お前が犯人なのか?それともクレオンに私を犯人にするようにそそのかされたのか?」

と激しくののしりました。さすがに頭にきたテイレシアスは、つい、

「犯人はあなた自身だ。その出生の謎が明かされる今日こそが、あなたの破滅の日だ。」

と口走ってしまいましたが、オイディプスは全く信じませんでした。

イオカステとの対話

オイディプスはイオカステに、

「クレオンが、予言者を使い、わたしをライオス殺しの犯人に仕立てて、追い落とそうとしている」

と主張しました。そこで、イオカステは、次のような過去の話をして王をいさめました。

「昔、ライオス王が、王と王妃との間に生まれる子どもによって殺される運命にある、という神託を受けたことがありました。

ところが実際には、ライオス王は3つの道が1つになる場所で、異国の盗賊どもに殺されたという話です。

また、ライオス王とわたしの間に生まれた子は、すぐに人に命じて、山奥に捨られてしまいました。

ですから、その子が父親を殺すようなことも、王が息子の手で命を落とすこともなかったのです。

予言とはその程度のものなので、お気になさらないでください。」

しかし、イオカステの話を聞いて、オイディプスは、胸騒ぎを感じました。

そこで、当時の事情を聞くために、イオカステにこの話をしたという、ライオス王の家来であった羊飼いを呼び寄せることにしました。

つづいてオイディプスは、イオカステに自分の過去の話をし始めました。

「自分はコリントス王の子として育ったが、ある酒の席で、酔った男に、おまえは本当は王の子ではないと言われたことがある。

そこで両親に事実を確認したところ、両親はすぐに否定した。

しかし、わたしは不安に駆られて、両親に内緒でデルポイの神託を伺いに行った。

アポロン神は私の問いには直接答えず、忌まわしき別の予言を告げた。

すなわち、わたしは母親と交わって子どもをもうけ、父親を殺すだろう、というのだ。

そこで、私は神託が成就しないように、両親のいるコリントスを離れて旅に出た。

やがて、3つの道が1つになる街道にさしかかったときに、前からやってきた一団と諍いが起こった。

そのときに、私は一人の老人を殺してしまったのだ。

その後、テーバイの町に入り、スフィンクスの謎を解いた次第。」

オイディプスはイオカステの話を聞いて憔悴しましたが、イオカステがなだめて、とりあえず、ライオス王殺害事件を目撃した召使いの到着を待つことにしました。

コリントス王の死

そんな中、コリントスから使者が来ました。コリントス王のポリュボスが亡くなったので、オイディプスをコリントス王として迎えたいという知らせでした。

しかし、オイディプスは、

「父ポリュボスを殺す可能性はなくなったが、母メロペはまだ生きている。母親と交わるという予言の成就の可能性がまだ残っている以上、コリントスに帰るわけにはいかない」

と要請を拒否しました。しかし、その使者は、

「そういうことでしたら、ご心配には及びません。オイディプス王はポリュボス王とメロペ王妃の実の子ではないのですから。

その昔、このわたしが羊飼いを務めていた時期に、ある別の羊飼いから、赤子であった王様を引き取ったのです。

王様のくるぶしには、古傷があるはずです。両の足を貫いていた釘を抜いて助けたのがわたしです。

王様がオイディプス、つまり「腫れた足」と呼ばれるのはそれ故です。

王様の身は、ポリュボス王に委ねました。

それで、子宝に恵まれなかったポリュボス王とメロペ王妃は、わが子のようにあなた様をお育てになったのです。

わたしに赤子を託した羊飼いは、たしかライオス王の家来だったはずです。

今から見つけて聞き出せば、より詳しい事情がお分かりになるでしょう。」

といいました。

コリントスの使者の発言により、すべての事のてん末を知ったイオカステは、

「子どもたちのためにも、あたたのためにも、もうこの件をこれ以上追及するのはやめてください」

とオイディプスに嘆願しました。

しかし、オイディプスは全く聞き入れずに、早くその羊飼いを探して連れてくるように家来に命令しました。

絶望したイオカステは、部屋を飛び出して行ってしまいました。

オイディプスの悲劇

しばらくして、オイディプスとコリントスの使者がいる場所に、その羊飼いの男が連れてこられました。

羊飼いは、はじめは当時の証言をかたくなに拒否しましたが、オイディプスから拷問されそうになり、ついに、

「昔、イオカステ様から、生まれたばかりの赤子を渡され、殺しておくように命じられました。

しかし、殺すにしのびなかったので、別の羊飼い、つまり今目の前にいる男(コリントスの使者)にその赤子を託しました。この男が遠い自分の国に連れ去ってくれると思ったからです。」

と告白しました。

羊飼いの告白を聞くまでもなく、オイディプスの母であり妻であった事実を知ってしまったイオカステは、羊飼いが告白していたのと同じ頃に、別の部屋で首を吊って自殺をしてしまいました。

呪われた真実を見抜けなかったオイディプスは、自らの両眼を針で突き刺し、盲目となりました。

盲目となったオイディプスは、テーバイを追放され、放浪の旅に出たのでした。

後世への影響

『オイディプス王』は、ギリシャ悲劇の最高傑作の一つとされ、さまざまな演劇論で、悲劇の傑作として評価されてきました。

アリストテレス(前384‐前322)は『詩学』の中で、「逆転」と「認知」が同時におこる悲劇の事例として、『オイディプス王』を取り上げています。

息子が父親を殺し、母親と交わるというオイディプス王の悲劇は、フロイト(1856‐1939)が提唱した「エディプス=コンプレックス」の語源になりました。

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