前5世紀頃、古代ギリシアのアテネでは、市民にいろいろな知識をさずける、ソフィストと呼ばれる職業的教師がたくさん現れました。
ソフィストが教えた内容は、世界の知識、歴史、幾何学、天文学、言語、日常生活についてなど、多岐にわたっていましたが、
教育内容で特に注目すべきなのは、弁論術(民会や法廷で聴衆を納得させる話術)です。
アテネの民主制の発展に伴って、民会や法廷の場で相手を説得して議論に勝つために、広い知識や弁論術が必要とされたのでした。
彼らは、市民が伝統や慣習にとらわれない批判精神をもつことを促しましたが、一方で、真偽にかかわらず、自分に有利なように議論を進めるための道具として弁論術を教えたために、やがて詭弁家という批判を受けました。
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プロタゴラス(前480頃‐前410頃)
プロタゴラスは、トラキアのアブデラ出身で、アテネで活動したソフィストです。
「万物の尺度は人間である」と語りました。
物事の判断基準はそれぞれの人の感じ方や考え方によって異なるのであり、全ての人間に共通する普天的な判断の基準は存在しないという考え方です。
ゴルキアス(前483‐前376)
ゴルキアスは、シチリア生まれのソフィストです。
前427年、外交大使としてアテネを訪れ、その雄弁によって使命を成功させるとともに、弁論術への関心を呼び起こしました。
ピュシスとノモス
ピュシス(希 physis)とは、物事の固有の性質のことで、ありのままの自然の本性を意味します。
自然哲学者たちは、人間から独立して存在するピュシスの根本的な原理について探究しました。
ノモス(希 nomos)とは、社会の法律・制度・慣習など、人間がつくりあげた人為的なものを指します。
ソフィストは、ピュシス(自然)とノモス(人為)を対立させ、法律・制度・慣習など人為的につくられたノモスは、国家によって異なる相対的なものであり、絶対的なものではないと説きました。
相対主義
相対主義は、知識や価値はそれ自体で存在する絶対的なものではなく、それを認識する人間との関係によって相対的に変化するという考え方です。
真理の絶対性を否定して、真理の相対性を説くもので、プロタゴラスの「万物の尺度は人間である」という思想に始まり、ソフィストによって広く主張されました。
相対主義は、独断や思い込みを批判する点で意義をもちますが、客観的な真理を否定することで、懐疑論に陥る傾向をもちます。