防衛機制とは、危険・困難・苦痛に直面した場合に、それによる不安や緊張を軽減しようとする無意識的な自我の働きのことです。
防衛機制は、フロイトの精神分析によって明らかにされ、その研究は弟子たちに引き継がれました。
フロイトの娘のアンナ=フロイト(1895‐1982)は、『自我と防衛』(1936)において防衛機制の概念を整理・分類しました。
アンナ=フロイトは防衛機制として、退行、抑圧、反動形成、分離、打ち消し、投影、取り入れ、自己への向き換え、転倒、昇華の10種類を挙げました。
その後防衛機制は、さらに修正を加えられた上で、一般心理学の分野で広く採用されています。
抑圧
欲求不満や不安・苦しみを、無意識に抑え込んで忘れてしまおうとすること。
(例)つらい虐待体験を、なかったことにして忘れる。
合理化
自分の行動にもっともらしい理由をつけて、自分の立場を正当化すること。
(例)試験に落ちた時に、自分の実力不足ではなく、試験問題が悪かったからだと考える。
同一視
他人の能力・価値・実績を自分がもっているように想像し、自分をその他人と同一であるように思い込んで満足すること。
(例)有名人の服装や振る舞いを真似する。
投影(投射)
自分の中の認めたくない欲求や感情を相手に投げかけ、相手がそのような感情をもっていると思い込むこと。
(例)本当は自分が相手を嫌っているのに、相手が自分を嫌っていると思い込む。
反動形成
抑圧された欲求や感情と反対の行動をとること。
(例)好きな相手にそっけない態度をとってしまう。
逃避
欲求不満や不安・苦しみに直面した時、その問題を解決しようとしないで、他の場所に逃げ込むこと。
(例)現実逃避:試験前に、大掃除をしてしまう。
(例)空想逃避:試験前に、試験に受かった後の計画を練って楽しむ。
(例)病気への逃避:試験前に、熱を出すなど具合が悪くなる。
退行
欲求が満たされない場合に、現時点の発達の前段階に逆戻りすること。
(例)弟や妹ができたことをきっかけに、赤ちゃん返りしてしまう。
代償(補償)
欲求が満たされない場合に、他のものに置き換えることで自分を満足させようとすること。
(例)スポーツができない代わりに、勉強をがんばる。
昇華
性の衝動や攻撃性など社会的に承認されない欲求を、文化的・社会的に認められた活動に置き換えて満たすこと。
(例)充たされない恋愛感情を、小説や音楽として表現する。
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