エピクロス(前342頃‐前271)は、ヘレニズム時代の哲学者です。
サモス島に生まれ、アテネ郊外に「エピクロスの園」と呼ばれる学園を開き、友人や信奉者と共に、友愛に基づく共同生活を送りました。
快楽主義
エピクロスは、飢えや渇きなどの最低限の欲求を満たして、肉体の苦痛を取り除き、死や神々などへの恐れや不安から解放され、自らに満足して、心の平静な状態(アタラクシア)の境地を楽しむという、精神的な快楽主義を唱えました。
アタラクシア
アタラクシア(ataraxia)とは、外界から煩わされない魂の平静な境地のことです。エピクロスはアタラクシアを、海の上で風がまったく止んだ凪の状態に例えました。
隠れて生きよ
エピクロスは、理想の状態を実現するために「隠れて生きよ」と唱えました。
これは、心を乱す原因となる政治や社会を避け、田園で魂の平安(アタラクシア)を求めて静かに暮らせという意味です。
エピクロス派の人々は、この教えを実践して、郊外の「エピクロスの園」で質素な共同生活を送りました。
エピクロスの死生観
エピクロスは、デモクリトス(BC420頃)の原子論を、自然学の基礎的な考え方としてもちました。
「死とは、わたしたちを形成する原子が分散することであり、したがって、わたしたちの霊魂は肉体とともに分散して消滅するのである。
死んだときにはすでに感覚もないし、死後の世界などもないので、死を実際に体験することはない。
つまり、わたしたちの生きている間は死はまだないし、死が来たときにはわたしたちはもういないのであるから、何ら恐るるには足りないのである。」
エピクロスは、このように主張して、死を恐れずにアタラクシアを実現するように説きました。
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ルクレティウス
古代ローマの詩人ルクレティウス(前94頃‐前55)は、『物の本質について』という著書で、エピクロスの原子論的自然観を、叙事詩の形式で紹介しました。
物の本質について (岩波文庫) [ ティトゥス・カールス・ルクレティウス ] 価格:990円 |
この本では、宇宙の生成、天体・生物・人類および文明の発生、人間の霊魂、社会などについて語られています。