新プラトン主義は、プロティノス(204‐270)が創始し、3世紀から6世紀にかけて栄えた、プラトン(前427‐前347)の哲学を継承する思想です。
プラトンの哲学を中心に、ピタゴラス・アリストテレス・ストア派の影響も受けながら、さらに神秘主義的要素を加えた思想です。
プロティノスは、エジプトのリコポリス(現アシュート)に生まれました。
アレクサンドリアで哲学を学んだ後、40歳の頃からローマで教えるようになりました。
古代ギリシア哲学を引き継いだプロティノスは、最後のギリシア哲学者とも呼ばれています。
新プラトン主義の思想
世界の創造
プロティノスは、世界は超越的な一なるものから流出して成立したという、一元論的な世界観を説きました。
一なるものは、神とも最高善とも呼ばれる存在です。
一なるものから、直観的知性としての精神(ヌース)が生まれ、さらにその精神が流出することによって霊魂が生まれます。
一なるものと精神と霊魂とは、相互に平等の立場ではありません。
一なるものが至高の存在であり、精神が二の次で、霊魂がもっとも低次のものとされます。
霊魂は精神に劣りますが、眼に見える世界の全てをつくったものだとされます。
以上のようなプロティノスの考え方は、一なるものから下位の階層へと流出する過程を説くことから、流出説とも呼ばれています。
一なるものとの合一
人間は、以下のように一なるものによる流出を逆上することによって、一なるもの(神)との合一を図ることができます。
まず、禁欲によって肉体的な欲望から自己を解放し、霊魂を浄化(カタルシス)します。
次に、善美のイデアを愛して精神(ヌース)の世界に立ち返ります。
最後に、自己を超越して最高善である一なるものとの神秘的な合一を成し遂げ、脱我(エクスタシス)の状態において霊魂の浄化を完成させるのです。
キリスト教への影響
- 古代キリスト教の神学者オリゲネス(185頃‐254頃)は、新プラトン主義の影響を強く受け、プラトン哲学とキリスト教神学の融合を図りました。
- 新プラトン主義は、アウグスティヌス(354‐430)の教父哲学の思想形成に影響を与えました。
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