タナトス(死の欲動) フロイト思想の用語

タナトス(英/独 thanatos)とは、事物を解体し破壊しようとする欲求で、死の欲動と訳されます。デストルドー(英: destrudoまたはdeath drive、独:Todestrieb)とも言います。

フロイト(1856‐1939)が、「快感原則の彼岸」(1920)という論文で初めて使用した概念です。ギリシア神話に登場する死を象徴する神「タナトス(Θάνατος)」から名付けています。

フロイトはもともと、心の動きを、性的な衝動を根源とする「快楽原則」と、自己保存の観点から、快楽原則にとって代わる「現実原則」との関係性の中でとらえていました。

しかし、第一次世界大戦(1914‐18)が勃発し、各地で悲惨な戦いが発生するのをドイツで目の当たりにしたフロイトは、従来の理論を修正する必要性を感じました。

フロイトは、第一次世界大戦帰還兵の心的外傷のフラッシュバック現象の治療等を通じて、人間には生命を破壊しようとする死の欲動がはたらいているのではないかと考えるようになりました。

そして、この破壊的な死の欲動と、人間を結合し統合する生の欲動を、人間の2つの根源的な欲求としました。

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